特許のメリット|特許出願するかを判断するために知るべき全ての知識

アイデアをイメージさせる写真

新しいサービスを検討しているときや新機能を開発しているとき、特許を取得するメリットについて気になったことがないでしょうか?

メリットがよくわからないので自社でも特許を取得すべきか判断できない、そんな悩みありませんか?

特許というと、模倣対策やコピー防止のイメージが強いですが、実は他にも多くのメリットがあります。

他方で特許出願にはデメリットと考えられる点も存在します。

そこで、この記事では特許を取得するメリットとデメリットを紹介します。

さらにもう一歩踏み込んで、特許を取得しないでおくメリット・デメリットについても説明いたします。

この記事を読み特許を取得する、または取得しないメリット・デメリットについて正しく理解していただくことで、貴社は特許を取得すべきなのか?という疑問を解決していただけます。

「特許申請どうするかな…」と、もやもやとした気持ちのまま事業を続ける必要がなくなります。

ぜひじっくり読んでみて下さい。

目次

1. 特許を取得する最大のメリット

まずは特許を取得する最大のメリットを説明します。

特許を取得する最大のメリットには、いくつかの付随する副次的なメリットもあるので、これらを理解することが重要だからです。

1.1 模倣品/コピー品の防止

特許権による差止請求を表す図

特許を取得する最大のメリットはなんといっても模倣品対策・コピー品の対策ができるという点です。

特許を取得すると、これら模倣品/コピー品が市場にあふれるのを防止することができます。

新たしい技術・アイデア、ビジネスモデルで未開の市場を開拓しようとするスタートアップ企業・中小企業にとって一番怖いのは模倣です。

しかも大きな資本力・人的リソースをもつ大企業から模倣されること。

せっかく開発した自社のサービスと良くにたサービスを、強大なブランド力を持つ大企業が資本力に物を言わせて市場に投入してきたのでは、スタートアップ企業・中小企業に勝ち目はありません。

しかし、特許権を取得しておけば、そのような模倣を排除できます

特許権というのは、そのような安易な模倣を行う者に対して法律に基づいて「やめろ」と言える強力な権利だからです。

この「やめろ」と言う権利を、法的には「差止請求権」と言います。特許法第100条に規定されている権利です。

具体的には、まずは模倣を行っている者に対して警告書や伺書を送付し、模倣行為をやめるよう求めます。

警告書などによってもなお模倣者が模倣行為をやめない場合、裁判所に特許権侵害訴訟という訴訟を提起する手続を取ることができます。

日経新聞等で、「XX社YY社を特許侵害で提訴」といった見出しを見たことがあると思います。

あれは、XX社がYY社に「模倣をやめろ」と訴えたという意味です。

ここ数年、特許権侵害訴訟の件数は、年間200件程度で推移しています。

裁判まで至る例は多くはないですが、実際に大企業によってノウハウや技術を盗用される例は多数報告されています。

特許を取得して模倣・盗用に備えたいです。

参照:「スタートアップの取引慣行に関する実態調査について」公正取引委員会

1.2 しっかりと模倣品対策を行うべき3つの意味

ちなみに特許権によりしっかりと模倣品対策を行うと、3つの副次的効果(メリット)が得られます。

  1. 売上減少防止
  2. ライバルの市場参入を防止・遅延
  3. ライセンス収益に発展する可能性

1.3 売上減少防止

売上損失を防止することを表す図

しっかりと模倣品対策を行うことによって、貴社の売上が大きく減少するのを防止することができます。

模倣品というのは開発のためのコスト・労力がかかっていない分、多くの場合、オリジナル・真正品(貴社製品・サービス)より圧倒的に安価です。

例えば、特許庁が行った「模倣被害実体調査」などでも模倣品が真正品に対して安価であることが確認されています。

調査で有効な回答があった409件の模倣被害のうち、実に361件において模倣品・模倣サービスの価格は、新製品に対して安かったと回答されています。

逆に模倣品・模倣サービスの方が、価格が高かった、または、価格はほぼ同じだったという回答は合わせても48件しか存在していません。

参照:特許庁による模倣被害実態調査

模倣品は安いことの説明

そのような安価な模倣品が市場に参入してくると、価格・料金面を重視するユーザーは模倣品に流出してしまいます。

しっかりと模倣品対策を行うことにより、貴社の売上・利益が減少するのを防止しましょう。

なお、売上の減少を防止するというのは、貴社が投資した研究開発コストをしっかりと回収するという意味でも重要です。

研究開発に投資することを検討しているのに模倣対策を行わないのでは、模倣行為を行う者や競合他社のために、貴社だけが開発費を負担することを買って出ているようなものです。

1.4 ライバルの市場参入防止・参入スピード遅延

迂回発明をするには時間が掛かることを表す図

特許を取得ししっかりと模倣品対策を行うということには、ライバルが市場に参入してくるのを防止、またはライバルの参入速度を遅くするという意味もあります。

この場合の模倣品対策は、いわば牽制です。

プレスリリースで「特許出願中」と書くメリットを表す図

例えば、新製品・新サービスの発表前に特許出願を行っておき、製品発表・プレスリリースを行う際には必ず「特許出願中」などと表示するようにします。

これにより競合他社(ライバル)には、貴社の製品・サービスを安易に模倣できないという心理が働きます。

特許権侵害は社会的にも関心が高いニュースですし、特許権侵害を侵してしまうと損害賠償の支払いや刑罰といった大ダメージの可能性も存在するからです。

あえて特許権侵害(になるかもしれない)行為を行いたいと考える者は少数派です。

ですから、そのような場合、競合他社としては特許権侵害を回避した発明をしようと試みます。

貴社の製品と方向性は似ているものの、貴社が取得するかもしれない特許権の効力が及ばない範囲まで製品やサービスの仕様や設計を変更しようと試みるわけです。

このように、仕様や設計を変更して特許権侵害を回避することを「設計変更」をするなんて言います。そして、その設計変更の際に生まれる発明を「迂回発明」なんて呼ぶことがあります。

ここで、このような競合企業が「迂回発明」を考えつくまでにどれくらいの期間が必要であったか調査したデータが存在します。

文部科学省 科学技術・学術政策研究所が2013年に行った調査結果です。

調査によると、迂回発明はオリジナルの発明の平均24ヶ月後に特許出願されていたそうです(情報通信産業の分野におけるデータ)。

参照:民間企業へのアンケート調査に基づく研究開発・イノベーションの課題(文部科学省 科学技術・学術政策研究所)

この24ヶ月の期間の間は、競合企業はあなたの市場に製品・サービスを投入できなかったはずです。

先行企業(貴社)は、その間により多くのユーザーを確保することができるわけですね。

ライセンス収益の可能性

ライセンス収入を得る可能性を表す図

特許権を取得していることにより、ライセンス収益を得ることができる場合があります。

例えば、貴社の特許権の存在を知った企業に、以下のような事情が存在すると、当該企業と特許権を有する企業との間でライセンス契約に関する交渉が始まり(このような交渉をライセンス交渉と言います)、交渉がうまく進むとライセンス収益に発展する可能性があります。

特許が成立している貴社のビジネスが魅力的なので、同様のビジネスを展開したい。

貴社ビジネスを活用した新ビジネスを始めたい。

貴社の特許権侵害を回避する新たな技術アイデア・発明が思いつかない。

これから技術開発をするより、貴社からライセンスを受けた方がビジネスメリットが高い

2. 特許を取得するさらなる6つのメリット

特許のもつ6つのメリットを表す図

特許を取得すると、模倣品対策の他にも更に以下のような6つのメリットがあります。

  1. 模倣品による損害の賠償を求めることができる
  2. 特許権侵害、ビジネス中止のリスクを低減できる
  3. ブランディング活動のエビデンスとすることができる
  4. 社員のモチベーションの向上に活用できる
  5. 知的財産を見える化できる
  6. 資金調達時に優位に活用できる

2.1 損害の賠償を求めることができる

特許権による損害賠償請求のイメージ
特許を取得しておけば、模倣品によって実際に貴社に損害が発生した場合には、その損害の賠償を求めることが可能となります。

特許を取得した者を侵害による被害から救済するためにこのような権利が認められているのです。

このような権利を損害賠償請求権といいます。これは民法709条に規定されている権利です。

特許権のイメージを表す図

先程の「やめろ」と言う権利(差止請求権)が、現在から将来・未来に向かって貴社の市場を守ろうとする権利であるのに対して、損害賠償請求権は、「かえせ」という権利、つまり既に荒らされてしまった貴社の過去の利益を守る権利です。

模倣品が出回り、特許権侵害(正確には侵害被疑行為)に気がついた時点では、多くの場合、既にある程度市場が荒らされ、貴社は損害を被っています。

ですが、特許権を取得しておけばそのような損害を賠償するよう求める可能性が残されるわけですね。

2.2 ビジネス中止のリスク・訴訟可能性の低減

特許による市場の取り合いをイメージする図

特許を取得することにより、貴社が他社の特許権を侵害し、ビジネスを中止せざるを得ない状況となってしまう可能性を低減することができます。

特許出願の前には、通常、先行技術調査・出願前調査という調査を行い、他社特許の状況を調査するからです。

この先行技術調査により他社が貴社と同様の技術に既に特許を出願していないか、特許権を取得していないかについておおよその情報を得ることができます。

また、実際に貴社が特許出願をし、特許庁の審査官による審査を受けることで、更に多くの他社特許情報を入手することができます。

審査官によって同様の発明・技術に特許されていなか詳しく審査がなされるからです。

特許査定を受けることができれば、それは貴社技術と同じ技術について他社が特許権を有していない証明となります。

他社の特許権を侵害してしまう可能性を大幅に低減することができます。

注:特許権侵害の可能性を完全に排除できるわけではないのですが、その点は別の記事で説明いたします。

2.3 ブランディング活動のエビデンスにできる

近年、ブランディング活動に力を注ぐ企業は増えていますが、特許取得はそのようなブランディング活動のエビデンスとして活用することができます。

特許を取得することにより、以下の3つの点が証明されるからです。

  • 貴社の技術・アイデアが斬新かつ独創的であること(斬新性・独創性)
  • 貴社の技術を使えるのは貴社だけであること(独占性
  • 貴社がそのような高い技術力・発想力を有すること

特許によるブランディングの説明図

例えば、サイクロン方式のコードレス掃除機で有名なダイソンは、「吸引力の衰えない唯一の掃除機」という価値をユーザーに届けることを中心としたブランディング活動を行っています。

このブランディング活動のエビデンスは取得済みの多数の特許です。

ダイソン社はイギリスの企業ですが日本でも積極的に特許を取得しています。これまでに248件の特許出願をし、うち168件が特許されています(2020年10月現在)。

そのような特許を取得していることにより、これらが根拠づけられています。

  1. 「吸引力が衰えない」という効果を得るための斬新かつ独創的なアイデア・技術をダイソン社が開発したこと、
  2.  その斬新なアイデア・技術が含まれる掃除機は「唯一」ダイソン社のものだけであること、
  3.  ダイソン社はそのような高い技術力を有する会社であること。

先程のメッセージ「吸引力の衰えない唯一の掃除機」と、そのような価値をダイソン社が顧客に届けているという事実を特許取得によって裏付け、ブランディング活動を展開しているのですね。

ブランディング活動の副次的効果

特許権取得をエビデンスとしたブランディングに成功すると多くの副次的メリットが得られます。

  • ブランディングによるメリットの例
  • 取引条件(価格)面での優位性
  • 競争力強化
  • リピート率向上
  • 優秀な社員獲得
  • 社員のロイヤリティー向上
  • 株価向上

ちなみにブランディング活動は、新しいロゴマーク・ネーミングなどを商標登録して行うとより効果的に進めることができます。

2.4 社員のモチベーション向上

社員のモチベーション向上を表す図

特許取得は、社員のモチベーション向上のためのツールとして使うこともできます。

発明者の氏名は特許公報に掲載されますし、自ら開発した技術・アイデアが特許庁による審査の結果特許されたという事実は、開発者・発明者にとってとても名誉なことです。

また、社内規定を設け、特許出願前後の様々なタイミング・段階に応じて報奨金を与える制度を設け、金銭的にも社員のモチベーション向上を図るといったことも可能です。

報奨金のタイミング例

特許出願時、特許取得時、取得した特許の事業化時、ライセンス収入を得たとき

参考までに独立行政法人労働政策研究・研修機構が平成18年に行った調査によると、すでにこのような報奨金精度を導入している企業が、各タイミングで支払っている金額は、以下のような金額だったようです。

職務発明をした従業員の処遇を表す表

引用元:「従業員の発明に対する処遇についての調査」 平成18年11月10日、独立行政法人労働政策研究・研修機構)

なお、このような規定を職務発明規定と言います。

適切な職務発明規定を設けることは、後に社員から過度に高額は対価(報奨)を請求されるリスクを低減するという意味もあります。

2.5 知的財産の視える化・可視化

社内の知財が可視化されるメリットを説明する図

特許を取得することにより社内の知的財産とその価値を「見える化」することができます。

特許出願を行うには、まず特許を取得したい発明(技術・アイデア・ビジネスモデル)を言語化して明細書という書類に記載しなければならないというルールがあります。

明細書とはこのような書類です。

特許の明細書のイメージ

引用元:知的財産相談・支援ポータルサイト 独立行政法人 工業所有権情報・研修館

技術・アイデア・ビジネスモデルが明細書上に言語化されることによって、貴社が有する知的財産がどのようなものか「見える化」され、その内容を客観的に把握することが可能となります。

その後、明細書を願書と共に特許庁に提出し、審査官による審査を経て特許査定がなされると、その技術に知的財産(特許権)としての価値が存在することが明確となってきます。

特許権が付与されたということは、他社はその技術を使用することができず、貴社だけがその技術を独占的に使えるということが法的に認められたということですからね。

また、特許を取得すると、その特許の具体的な価値はどれくらいか?といった事も、「知的財産価値評価」という手法を使って評価することが可能となります。

「知的財産価値評価」手法によって適切に価値を評価された特許権は、その価値が客観的に評価された財産として、譲渡の対象としたり、融資担保として活用したりしやすくなります。

2.6 資金調達面での優位性

資金調達に特許が活用できることを表す図

特許を取得すると、ベンチャーキャピタル・投資家・銀行などからの資金調達の面で優位になると言われています。

ベンチャーキャピタル・投資家・銀行などが投資・融資の際に特許取得を重要視する理由は以下にあると考えられます。

  • 模倣品対策・競合参入リスクの回避
  • 事業継続性の担保
  • 技術力・ブランド力強化の可能性

つまり、特許取得を重要視するこれらの投資家・金融機関は、この記事でこれまで説明してきた特許のメリットと必要性をしっかりと理解しているということだと思います。

投資家が特許取得を重視する理由を表す図

例えば、ベンチャーキャピタルのニッセイ・キャピタルか株式会社は自社のウェブサイト上で、ベンチャー企業・スタートアップ企業が、起業からIPOに至るまで知財戦略を立案実行していけるよう支援していくことをウェブサイト上でも明言していますね。

3. 特許取得に伴う4つのデメリット

特許を取得するデメリットを表す図

ここからは、特許取得・特許出願に伴うデメリットを説明します。

特許取得はデメリットも伴いますし、そのようなデメリットを正しく理解することは、「貴社が特許を取得すべきか?」という疑問に答える上で、とても重要だからです。

ただ、これから説明するデメリットは考え方によってはデメリットとばかりも言えない面もあるので、その点についても併せて説明していきます。

さて特許取得に伴うデメリットと考えられる点は4つです。

  1. 特許は必ず取れるとは限らない
  2. 取りたかった特許が取れるとは限らない
  3. 特許は20年の期間限定
  4. 発明・アイデアは公開されてしまう

3.1 特許は必ず取れるとは限らない

特許権は必ず取得できるとは限りません。

特許庁の審査官による審査をパスしなければ、特許権は付与されないからです。

特許出願までの道のりを表す図

審査官による審査では、出願された発明が新しいものであるか(新規性を有するか)、進歩的なものであるか(進歩性を有するか)、他にその発明について既に特許権を持っている人がいないか(先願であるか)など多くの点がチェックされます。

審査でチェックされるポイント

  • そのアイデアが発明に該当するか
  • その発明が新しいか(新規性)
  • その発明が進歩的か(進歩性)
  • 他に権利を持っている人がいないか(先願主義)
  • 発明が産業に関係するものか(産業上利用性)
  • 発明が明確に記載されているか(明確性)
  • 他人がその発明を実施できるか(実施可能性)
  • 発明がきちんと開示されているか(開示要件)
  • その他、手続がきちんとなされているか(単一性、補正要件など)

そして、これら多くのポイント(要件)のうち、一つでも満たされていない点があると審査にパスすることができません。

審査にパスできないと「拒絶」といって特許権を取ることができないばかりか、それまで手続のために使った労力・費用(出願手数料、出願審査請求手数料、弁理士費用など)が無駄になってしまいます。

一般的に特許取得に必要な費用

80~100万円

特許取得までに依頼者が行う作業の例

  • 特許出願のための予算組、社内稟議
  • 技術内容・発明内容を弁理士に説明するための資料等の作成
  • 弁理士との面談、事業内容・発明内容の説明
  • 弁理士への依頼作業(見積書の確認、契約、着手金の支払い等)
  • 特許事務所によって調査された先行技術の理解・把握
  • 出願書類作成のための情報(出願人情報、発明者情報等)の準備
  • 弁理士に代理を委任する委任状の作成、押印
  • 弁理士によって作成された出願書類のチェック
  • 審査官による拒絶理由通知の内容の把握
  • 弁理士によって作成された拒絶理由対応案の把握・理解
  • 弁理士によって作成された意見書案・補正書案のチェック

とはいえ、特許を取得することができる確率(特許査定率)は、近年75%前後と高い水準で推移しています。

参考資料:特許行政年次報告書2020年版(特許庁)

特許が取得できず、費用や労力が無駄になってしまう確率は低と言えます。

また、出願前に行う先行技術調査を、元審査官によって行う等、入念な処置を施すことによって特許査定率を更に上げることも可能です。

更にいうと、仮に最終的に特許を取得できない場合であっても、特許出願をした後に「特許出願中」といった表示を製品・パッケージなどに付して宣伝広告に活用したり、プレスリリースをうまく活用することによって他社を牽制したりするなどして、特許出願自体を有効に活用するという考え方もあります。

「特許出願中」という記載・表示を見たら、安易にマネしないほうが良さそうだな…と思いますよね。

3.2 取りたかった特許が取れるとは限らない

特許が取れないことを説明する図

特許は、自分が取りたかった形で取れるとは限りません。

審査の過程で、審査官によって様々な先行技術文献(貴社の発明と同一の技術、または類似した技術が記載された文献)が発見され、特許権付与を希望する範囲(特許請求の範囲といいます)を調整する必要が生じる場合あるからです。

例えば、貴社は「写真撮影機能付きのスマートフォン」に対して特許を請求したかったとします。

しかし審査の過程で、審査官からこのような通知を受けることがあります。

「写真撮影機能付きのスマートフォン」は既に先行技術が存在する。新規性が無く特許査定することはできない。
だけど動画撮影機能付きのスマートフォンであれば特許することができる。
(このような通知を、「拒絶理由通知」といいます。)

この場合、貴社は「動画撮影機能付きスマートフォン」の特許権を取得するか、別の可能性を検討するかということになります。

ただ、このような状況はデメリットとばかりも言えない面を有しています。

他社特許情報は、貴社が開始しようとしていた事業が、すでに他社によって検討されたり、すでに行われたりしているという情報であり、貴社の事業・経営の方向性を再検討するのに有効な情報だからです。

例えば先程の例だと、貴社はもしかしたら動画撮影機能付きスマートフォンに注力したほうが良いと判断すべきかもしません。

3.3 特許権は20年限定の権利

特許権の存続期間中及び特許消滅後の効果を説明する図

特許権の存続期間は出願から20年間です。このように、特許権が期間限定の権利であるという点はデメリットとも考えられます

20年の存続期間が経過し、特許権の効力が切れた後は誰でもその技術を使用することができるからです。

ただ実際には、技術の移り変わりが激しい現在では20年間もの間、市場を独占できれば十分という業界・製品も多く存在すると思います。

例えば経済産業省が2012年に行った調査によると製品寿命が3年以内の製品の割合は下のグラフに示すように大幅に増えています。

製品寿命が短くなっていることを表すグラフ

引用元:事業会社と研究開発型ベンチャー企業の連携のための手引き(初版)産業技術環境局 技術振興・大学連携推進課
平成29年5月 (Ver.1.0) 

また、特許庁が発行する特許行政年次報告書という統計資料を参照しても、特許権の登録から3年間は100%の企業を特許権を維持しつづけますが、その後の特許権維持率は、7年目に80%をきり、10年後には50数%まで下がっています。

特許の維持率は高くないことを説明する図

引用元:「特許行政年次報告書2020年版」、第1部第1章 国内外の出願・登録状況と審査・審判の現状

3.4 発明・アイデアは公開されてしまう

特許出願をすると発明・アイデア・技術の内容は、特許庁によって発行される公開公報という公報によって公開されます

公開公報によって発明・アイデア・技術の内容が公開されてしまう点は、特許取得に伴うデメリットとも考えられます。

技術の内容が公開されるということは、他社が、その技術を迂回した技術を発明する可能性や、その技術を参考にしたさらに優れた技術の開発に成功する可能性が生じるからです。

また、これまで説明したように、特許は必ず取れるとは限らない、特許は20年限定という性質(デメリット)を有しています。

これらデメリットとも関連しますが、発明・アイデアの内容が公開され、特許と取得できなかった場合、または特許権の存続期間が切れた場合には、誰でも容易に貴社の技術を使用できることとなります。

発明公開によるメリットとデメリットの説明図

他方で、発明・アイデア・技術が公開されるという点は、メリットと考えられる面も有しています。

例えば、一度その技術が公開されると、他社がそれ以降にその技術について特許を取得する可能性がなくなります

その技術の新規性が無くなるからです。

つまり特許出願をするということは、自社で特許の取得を目指す行為であると同時に、他社の特許取得の可能性を排除する行為と言えます。

また、発明が公開公報によって公開されることのメリットと考えられる点として、事業会社・大企業との提携へとつながる可能性が挙げられます。

大企業・メーカーは、自社と関連する技術分野の公開公報を定期的にウォッチしています。

このようなウォッチを行う主たる目的は、競業他社が自社に不利な特許を取得しないかの監視ですが、他方で、興味ある技術がスタートアップ企業・ベンチャー企業などから出願されると、事業提携にメリットがあると判断されることもあります。

そのような場合には、スタートアップ企業が大企業から資金援助を受ける可能性や、両社の共同開発という形で事業を進める可能性が出てきます。

4. 特許を取得しないメリットとデメリット

特許出願しないほうが良いことをイメージさせる図

このように特許を取得しようとすると発明を知られてしまったり、特許は期間限定だったりするので、特許を取得しないほうがメリットがあるというケースも存在します。

そこで、ここからは特許を取得しない場合のメリットとデメリットを見ていきます。

貴社が特許を取得をするかしないかの判断をするには、特許を取得しないでおくメリットとデメリットについての理解が欠かせないからです。

特許を取得しないメリットは2つ、デメリットは5つ存在します。

メリット

  1. 永遠に市場を独占できるかもしれない
  2. 特許取得にかかる費用が必要ない

デメリット

  1. 一度でも秘密が知られてしまったらおしまい
  2. 秘密を管理するコストがかかる
  3. 他社に特許を取得されてしまう可能性
  4. 他社特許調査を別途行う必要性
  5. 特許取得のメリットは受けられない

4.1 永遠に市場を独占できるかもしれない

発明を秘密にすることのメリットを表す図

特許を取得せず、貴社の技術を社内だけの秘密にすることができれば、貴社だけがその技術を永遠に使い続けることができるかもしれません

特許権のように20年限定といったしばりは無くなります。

その技術によって生み出される製品やサービスが魅力的なものであれば、貴社は永遠に市場を独占し続けることができるかもしれません。

例えば、コカ・コーラ社はコカ・コーラの製法に関して特許を取得していないことは有名です。

その製法は社内のノウハウとして厳しく秘密管理されていて、全世界でコカ・コーラのレシピを知っているのは重役2人だけなのだそうです。

参照:「コカ・コーラ」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

コカ・コーラが発明されたのは1886年ということですから、既に130年以上もの間、コカ・コーラ社はあの独特な風味と市場を独占し続けていることになります。

4.2 特許取得にかかる費用・労力が必要ない

特許を取得しないので、特許庁や特許事務所に支払う費用が発生しません。

一件の特許権を取得するには、合計で約80万円~100万円の費用が必要ですので、その分の費用を節約(?)できます。

また、上述したように特許を取得するには、あなたも明細書や願書等の書類をチェックするなど作業を行う必要があります。

その労力が節約できます。

4.3 特許を取得しない5つのデメリット

他方で発明・技術について特許を取得しないでおくことにはデメリットも伴います。

考えられるデメリットは5つです。

  1. 一度でも秘密が知られてしまったらおしまい
  2. 秘密を管理するコストがかかる
  3. 他社に特許を取得されてしまう可能性
  4. 他社特許調査を別途行う必要性
  5. 特許のメリットを受けられない

4.4 一度でも秘密を知られてしまったらおしまい

秘密は一度でも知られたらおしまいであることを表す図
特許を取得しない場合、永遠に市場を独占できるのは、秘密を守り通せたときに限られます。

インターネットの発達にともない情報が伝播・流布する速度と範囲は格段に早く、そして大きくなりました。

秘密として管理していた貴社の技術・アイデアが一度でも公開されてしまうと、それを再び秘密の状態に戻すことはできません

特許権を取得していないので、法的に貴社の技術・ビジネスを守るすべは存在しません

4.5 秘密を管理するコストがかかる

そのような状態にならないよう、特許を取得しないノウハウ・技術は営業秘密として厳しく管理する必要があります。

例えば経済産業省が発行する「技術流出防止指針」によると、意図せず技術が社外に流出してしまうのは以下のパターンが多いと指摘されています。

意図しない技術流出が発生する7つのパターン

  1. 技術ライセンスや技術援助にまつわる技術の流出
  2. 海外生産の開始・拡大にともなう技術流出
  3. 製造に必要な部品や材料に化体された技術流出
  4. 製造に必要な機械や設備に化体された技術流出
  5. 製造に必要な図面やノウハウの流出を通じた技術流出
  6. ヒトを通じた技術流出
  7. その他の要因による技術流出

参照元:「技術流出防止指針」本体(平成15年3月14日)(PDF形式:648KB)

このような多様なシーンを想定して、貴社の技術が流出しないようしっかりと秘密管理体制を構築していく必要があります。

それには相応の労力とコストが必要となります。

4.6 他社が特許を取得してしまう可能性

特許を取得しないデメリットを表す図

特許を取得せずに秘密管理・ノウハウ管理していくという選択をとる場合、他社がその技術と同じ技術を発明し、その技術について特許出願・特許権を取得してしまう可能性が残ります。

貴社の発明は秘密とされている状態なので新規性を失っておらず、貴社による特許出願もされていないので、主要な特許要件(特許を取得するための条件)は満たされていると考えられるからです。

貴社と同じ技術・アイデアに対して他社が特許権を取得してしまうと、最悪の場合、他社によって貴社が特許権侵害で訴えられるという可能性すら存在することとなってしまいます。

知識のある方は、「「先使用権」があるから大丈夫でしょう?」とお考えかもしれません。

確かに理論上(特許法上)は、貴社に「先使用権」と言われる実施権が発生し、貴社はその発明を使い続けることができます。

ただ、その「先使用権」が存在することを裁判などできちんと立証できるよう、客観的な証拠を準備しておくのは予想しているよりもずっと大変なことです。

4.7 他社の特許権の存在は別途確認が必要

今、貴社が「特許取得をしないでおこう」と考えている発明に対して、他社が既に特許を取得してしまっている可能性も存在します。

つまり、これから貴社が始めようとしている新規事業が、他社の特許権を侵害してしまう可能性が存在します。

そのような他社特許の特許権侵害とならないよう、貴社は特許を取得しないという選択をする場合であっても、競合他社の特許状況の調査は必ず行うようにすべきです。

他社特許の調査をせずに事業を開始すると、後に特許権侵害という大ダメージを負う可能性があるからです。

4.8 特許のメリットを受けられない

特許のメリットを受けられないことを説明する図

特許のメリットを受けられないという点自体も、特許を取得しないデメリットであると考えられます。

発明の内容を外から見て確認できるような製品・サービスの場合、その製品・サービスを販売してなお、発明を秘密にしておくということはできません。

模倣は極めて容易です。

他方で、そのような製品の場合、特許を取得せずして模倣品対策を行うことは、不可能または極めて困難です。

発明の内容を外から見て確認できるような製品・サービスの例

  • 単純な仕組みや構造
  • 分解すれば中を見ることができる機械部品構造
  • 簡単に回析・調査できる場合の材料組成
  • 動作からアルゴリズムなどを想像できるソフトウェア
  • ビジネスモデルなどアイデア自体に主眼が置かれる発明

特許権が存在しないので、模倣に対してヤメロと言ったり、損害賠償を求めたりしたいと考えるなら、根拠となる別の理由・権利を用意する必要があります(なかなか思いつきません)。

ブランディングや資金調達において優位性を確保するためには、別のエビデンスや根拠・担保等を別途用意する必要があります。

5. 特許を取得しないほうが良いケース

さてここからは、これまで説明してきたメリットとデメリットを踏まえて、特許を取得したほうが良いと考えられるケース、特許を取得せずに秘密にしたほうが良いと考えられるケースを紹介します。

まずは、特許を取得しないほうが良いと考えられるケースから説明します。

特許を取得しないほうが良いと考えられるケースは3つです。

  1. 特許を取得するよりも効率的な模倣対策が存在する
  2. 特許権のメリットを十分享受できない
  3. 特許を取得できないので秘密にするしかないケース

5.1 特許よりも効率的な模倣対策がすでに存在する

貴社が、すでに特許よりも効率的な模倣対策手段を有している場合、特許を取得せず発明を秘密として管理していくことが良いかもしれません(「…かもしれません」と言っている理由は後述します)。

製品に含まれる発明の内容を外からでは確認できず、かつ、貴社がすでに強固な秘密管理体制を有している場合などです。

例えば、製造工場で使う金型、製造・加工方法、品質検査方法などは、開発に高い技術力が必要ですし、完成したノウハウは非常に高い技術的価値を有します。

ですが通常、工場内に社外の人間が入ることはできないので、第三者がそのノウハウを知ることはできません。

金型の形状・寸法等は完成した製品から知ることも困難です。

こんなときは、うまくすれば市場を独占し続けることができるかもしれないので、そのような独占性を重視する場合、特許出願をしないという判断をすることになります。

ただ、他社が貴社と同様の技術を発明し、その発明に特許を取得してしまう、その発明を含んだ製品が市場に現れるという可能性は排除できません。

その場合には、貴社製品の市場での価値が急落してしまうかもしれませんし、他社特許の侵害という複雑な事態に巻き込まれてしまう可能性もあります。

5.2 特許権のメリットを十分享受できない

また特許権のメリットを十分享受できない、特に差止請求権を行使しにくい場合は特許出願しないようが良い場合があります。

先程の例と重複しますが工場内で使われる技術がこれに当たります。

工場で使われる技術は特許出願しないほうが良いことを表す図

工場内で使われる技術は、仮に特許された技術と同じ技術を他社が使用していたとしてもその発見は極めて困難です。

なので、他社に対して「ヤメロ」というのも難しいという事情があります。

他方で、特許出願をすると技術の内容は出願公開によって他社に知られることとなります。

メリットに対してデメリットが大きく感じられ、このような場合は特許出願をしないという判断がされることもあります。

5.3 特許を取得できないので秘密にするしかないケース

もう一つの特許出願をしないほうが良いと考えられるケースは、特許法上、特許を受けることができない場合です。

具体的には、貴社のアイデアが特許法上の「発明」に該当しない場合です。

特許法上の発明に該当しない例

  • ゲームのルールそれ自体(単なる取り決め)
  • 技術的なアイデアでないもの(発明は、技術的思想でなくてはならない)

参考:特許庁「特許・実用新案審査基準」、第三部特許要件 第1章 発明該当性及び産業上の利用可能性(特許法第29条第1項柱書)

ただこのようなものの中にも、ビジネスを行う上で有用なノウハウは多数あります。

技能は特許を取ることができなので特許出願しないほうが良いことを説明する図

例えば、熟練した工場の職人によってのみ達成可能な微細な加工技能・スキルなどです。

ですが特許法上ではそのような技能は特許を受けることができません

これらは特許出願せず、自社の強みとして社内から流出することのないよう秘密管理するようにしたいです。

6. 特許を取得したほうが良いと考えられるケース

最後に、特許を取得したほうが良いと考えられるケースを4ケース紹介します。

特許を取得すべき4つのケース

  1. より効率的に模倣品対策・競合他社参入の阻止を図りたい
  2. 資金調達・事業提携の可能性・安全性を高めたい
  3. ビジネス継続性を重視したい
  4. より効率的にブランディング活動を行いたい

6.1 より効率的に模倣品対策・競合他社参入を阻止したい

効率よく模倣品対策を行いたい競合他社が市場に参入してくるのをより効率的に阻止したい場合は、発明を秘密として発明を管理しようとするよりも、特許を取得した方が良いと考えられます。

特許権は、模倣に対して「やめろ」とはっきり言える権利(差止請求権)

損害の賠償を請求することができる権利(損害賠償請求権)

「特許取得済」、「特許出願中」等の理由による牽制効果

すでに説明した通り、特許取得は、模倣対策・競合参入防止策として、これらの強力なメリットがあるからです。

特許が有する強力なメリットを表す図

発明を秘密にすることによっても模倣を防止することができる場合もありますが、他社に対して法律に基づいて模倣をやめろとまで言うことはできません。

特許取得には、1件あたり80~100万円といった費用が必要となりますが、この費用はこれから秘密管理体制を社内に構築していく費用よりもおそらく安価です。

また、模倣対策をしなかった場合に減少してしまう売上と比較すれば、その費用対効果の高さも明確です。

特許の費用対効果の計算例
ターゲット市場の市場規模: 約5億円
目標シェア: 30%
製品寿命想定: 5年

→ 目標とする年商: 1億5千万円

この場合に、仮に10%売上が減少することを想定すると、貴社の売上減少額は毎年1500万円です。

何も対策をしないと、製品寿命5年間の間、毎年1500万円もの売上減少が発生し続け、減少の総額は7500万円です。

6.2 ビジネスの継続性を重要視したい

ビジネスの継続性事業の持続性を重要視したい場合も、特許を取得したほうが良いと考えられます。

先行技術調査、特許出願、審査官による審査といった一連の特許取得活動により、他社の特許状況の確認も同時に行うことができ、これによって他社の特許権侵害となってしまう可能性を低減できるからです。

仮に、他社の特許権を侵害することとなってしまった場合でも、自社で特許を取得していれば、「クロスライセンス」というライセンス手法により大ダメージを受けることなくビジネスを継続できる可能性を残すこともできます。

なお、特許を取得していない場合であっても、侵害予防調査等を行うことにより、特許権侵害のリスクを下げることは可能です。

ただ、どんなに調査を行っても特許侵害の可能性をゼロにすることは通常とても困難なことので、自社で特許を保有し、「クロスライセンス」に備えていないことが、大きなマイナスにつながる可能性はあります。

クロスライセンスを説明する図

6.3 資金調達・事業提携の可能性を高めたい

資金調達や事業提携の可能性を高めたい場合も、発明を秘密にするより特許を取得したほうが良いと考えられます。

発明・技術力といった目に見えない貴社の財産(知的財産)が、「特許権」として「視える化」されることによって、投資家や事業提携を検討する事業会社(大企業)などに評価される可能性が上がるからです。

ベンチャー企業と事業会社の事業提携の例

CYBERDYNE株式会社 × 大和ハウス工業株式会社

医療介護支援ロボット「HAL」の開発・実用化を行うサイバーダインに対して、ダイワハウス工業は、HAL販売面での事業提携、多額(約40億円)の出資を行うなどした。

株式会社ZMP × 株式会社ディー・エヌ・エー

自動運転技術のZMPと、インターネットサービス事業を展開するDeNAは、2015年、合併会社としてロボットタクシー株式会社を設立した。

株式会社ZMP × ソニー

自動運転・ロボット技術のZMPと、カメラ通信技術のソニーモバイルコミュニケーションズは、2015年に自立飛行型ドローンの開発・販売を行うエアロセンス株式会社を設立した。
リンク:エアロセンス

6.4 より効率的にブランディング活動・マーケティング活動を行いたい

特許によるブランディングの説明図

より効率的にブランディング活動・マーケティング活動を行いたい場合も特許を取得したほうが良いです。

特許のメリットのところでも説明しましたが、特許というのは斬新性独創性独占性高い技術力といったことを、これ以上ないほど効率良く証明することができるツールだからです。

「この技術は特許を取得している」の一言で済んでしまいます。

このような特性は、斬新で独創的なビジネスモデル・ビジネスアイデアで、新しいマーケットを創出しようとしているスタートアップ企業や、高い技術力で勝負している研究開発型のベンチャー企業がブランディング活動のエビデンスとして活用するのにうってつけです。

貴社がこれから創出しようとしているマーケットに、模倣品や競合他社が入ってくるのを防止しつつ、貴社の独自性を主張し、ブランド価値を高めていけるわけですから。

特許権が可能とする「参入障壁構築」と「ブランディング」の図

こう考えると特許取得に必要な費用は、マーケティング費用の一部と考えることも可能です。

7. まとめ

この記事では、特許を取得するメリット・デメリットと、特許を取得しないメリット・デメリットを説明した上で、特許を取得しないほうが良いケースと、特許を取得したほうが良いケースについて紹介しました。

総合的に考慮すると、特許を取得しない方が良いと考えられるケースは、この3つに集約されると考えられます。

  • 市場を永遠に独占したいと考える場合
  • 特許取得のメリットが享受できない場合
  • 特許を取得できない場合

他方で、特許を取得した方が良いと考えられる場合とは、このように言うことができます。

特許権の「守るツール」としての性質と、事業を成長させる「攻めのツール」としての性質を総合的に活用したい場合

守りのツールとしての側面

  • 模倣品等による売上減少のリスク軽減ツール
  • ビジネス中止のリスク軽減ツールとして

攻めのツールとしての側面

  • 資金調達・事業提携の可能性拡大のためのツールとして
  • 効率的なブランディング活動・マーケティング活動のためのツールとして
  • 市場独占のチャンス拡大のツールとして
  • 他社特許情報を自社の経営方針策定・変更へ活かすためのツールとして
  • 社員のモチベーションを高め、企業を成長させるツールとして

    特許を取得する費用を支出するかどうかの最終判断は、これら多数の効果を得るために資金を投資したいかどうかの判断とも言い換えることができますね。

    ぜひ一度、投資を検討してみてください。

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