「著作権と商標権って何が違うの?」
「会社のロゴマーク、サービスマークなどは著作権で守られる可能性がある。そう聞いたので商標登録すべきか迷っている。」
今日は、そんな貴方のために記事を作成しました。
結論から言うと、ビジネス上の識別標識として使用するサービスマーク・ロゴマークは必ず商標登録して下さい。
ロゴマーク等は著作権で保護される場合もありますが、ビジネスで識別マークとして使用するには商標権を獲得しておくほうが圧倒的にメリットが高いからです。
以下に詳しく説明するのでぜひ最後まで読んでみて下さい。
ビジネスでロゴマークを使う上での商標登録のメリットが理解でき、商標登録出願へと一歩を踏み出していただけると思います。
目次
1. ロゴのビジネス使用で考慮すべき著作権と著作権の5つの違い
ビジネスでロゴマーク・サービスマークを使用・活用したいと考える上で著作権と商標権の間の重要な違いは5つあります。
- 権利発生の仕組みにおける違い
- 保護期間の違い
- 権利を維持するための費用上の違い
- 差止め・損害賠償請求をする際における違い
- 著作権・商標権が守ろうとするものの違い
さっそく順番に説明していきます。
1.1 権利発生の仕組みにおける違い
著作権と商標権は、権利発生の仕組みが異なります。
著作権は、「著作物」が創作された時点で発生します。ロゴマークなどが、著作物と認められるためには著作物性といわれる要件が満たされる必要があります。
著作権を得るために、官公庁に書類を提出するなどの手続きは一切必要ありません(無方式主義)。
これは著作権が発生しているかどうかの「審査」という概念が存在しないことを意味します。実際に著作権が発生しているかどうかは、著作権侵害の裁判の場で争われることとなります。
裁判の結果、ロゴマークは「著作物」であると判断されず著作権が認められない場合も有ります(例:東京高裁平成8年1月23日)。
例えば、以下のロゴマークはいずれも、裁判所において美的創作性の観点から著作物性が無い、つまり著作権が発生していないと判断されました。
(引用元・裁判例:東京高裁平成8年1月23日、別紙(一))
これに対して、商標権は特許庁に願書とよばれる書類を提出、審査官による審査の結果、商標登録を認められたものに対して登録料を支払うと権利が発生します(方式主義)。
ビジネス上の意味合い
商標権は、出願・審査・登録を要件としているため権利が発生していること、つまり権利の始期(権利期間がいつからか)が明確です。
また商標権は、審査の結果登録を認められたものに対してのみ発生する権利なので、逆に言うと登録されている商標権を容易に検索可能です。
ロゴマークのような図形の商標も特許情報プラットフォームJ-Platpatを使って検索することができます。
他社がすでに登録・使用している登録商標を検索し、それら登録商標と異なる商標を自社で登録することにより、他社の商標権侵害となってしまうリスクのことを心配せず、自社商標を安心して使っていくことができます。
1.2 保護期間の違い
著作権と商標権では発生した権利がいつまで持続するかという「権利期間」、「保護期間」も異なります。
著作権の保護期間は、著作者が生存している間と死後70年の間です(一部例外があります)。著作権の保護期間を延長・更新することはできません。
これに対して商標権の保護期間は、商標権の設定登録から10年間で終了することとなっています。
しかしこの10年間の保護期間は更新登録申請とよばれる手続きを取ることによって延長・更新することができます。
更新登録申請は繰り返しすることができるので、事実上、商標権の保護期間は半永久的と言えます。
ビジネス上の意味合い
著作者の死後70年といった保護期間で製品寿命がカバーされれば問題ありません。
しかし「より長い期間」ということであれば商標権を取得すれば圧倒的に長い保護を受けることができます。
また保護期間が終了するタイミング(権利の末期)を、自分でコントロールできるというのも経営者にとって大きなメリットと考えられます。
ビジネスの存続具合に応じて、商標権の維持・放棄を判断すれば良いのですから。
1.3 権利を維持するための費用上の違い
著作権と商標権では権利を維持するために必要な費用が異なります。
商標権は、登録料の支払いを前提に発生する権利なので商標登録出願等の権利取得費用と10年ごとの登録料・更新料が必要となります。
著作権は、登録・更新といった手続自体が存在せず、そのための費用も必要ありません。
ビジネス上の意味合い
商標権を維持するためには、何年間保護を受けたいかという点を考慮して予算を確保しておく必要があります。逆にいうと、予算を確保し更新手続きさえ怠らなければ、その間は確実に商標権を維持しつづけることができます。
差止め・損害賠償請求をする際における違い
著作権・商標権は差止請求権・損害賠償請求権といった権利を行使する際にも違いがあります。
最大の違いは著作権の権利行使の際に、「依拠性」と呼ばれる要件の充足が求められる点です。
自分が創作したロゴマークと類似したロゴマークを見つけ、それに対して権利を行使したい場合(差止請求・損害賠償請求したい場合)、そのロゴマークが類似しているのは他者が自分のロゴマークを真似したからである(依拠したからだ)ということを著作権者が立証する必要があります。
商標権の行使には、このような依拠性は求められません。
商標権侵害においては、商標・区分が同一または類似であれば権利行使を行うことができます。
ビジネス上の意味合い
他社の商品・サービスに対する識別マークとしてロゴマークを使用する以上、権利侵害を行うロゴマークに対してははっきりと使用停止の意思表示をできなくては意味がありません。
著作権では、そのために依拠性を立証する必要がありますが、商標権ではそれが必要ありません。
2.著作権と商標権のその他の違い
著作権と商標権には、その他にも違いがあります。
なかでも重要なのは『法目的』の違いです。
著作権法と商標法の法目的における違い
著作権法の究極の目的は文化の発展です。
創作活動を行う著作者を保護することによって文化の発展に寄与するよう様々なルールを定めるのが著作権法です。
なので保護されるためには創作性が求められます。その結果、ロゴマークでも保護されるものと保護されないものが存在したりします。
これに対して商標法の究極の目的は、産業の発展と需要者の利益の保護です。
おなじ商標(ロゴマーク)がついているものは、同じ事業者によって販売されているものだから一定の品質が保証されているであろうという需要者の期待を守り、それによって経済・産業が発展していくことを促す法律とも考えられます。
そのようなロゴマークは、識別マークにすぎないので創作性は必要とされず、逆に多数の者が同一のロゴマークでビジネスを行うとユーザーは混乱してしまうので、特許庁がきちんと登録の可否を審査することとになっています。
刑事罰上の違い
著作権法・商標法ともに刑事罰が定められています。
刑罰はどちらの場合も、10年以下の懲役、若しくは1000万円以下の罰金、またはこれらの併科です。
3.まとめ
今回はロゴマークを会社・サービス等の識別マークとして使いたい場合の、商標権による保護と著作権による保護、どちらが適しているかを説明しました。
商標権は、特許庁への出願・登録・維持費(登録料・更新料)が必要となりますが、そのため権利の始期・終期がはっきりとしており、権利の存続を自分でコントロールすることができます。
希望すれば商標権を半永久的に維持することも可能です。
これらの特徴は、ロゴマークをビジネス上の識別マークとして使用するには大きなメリットと考えられます。
模倣・侵害を行う第三者に対する権利行使の面を考えてもビジネス上、非常に使いやすい権利と言えます。
これに対して著作権は、権利発生に書類手続・登録・維持費等が必要ありませんが、実際に権利が発生しているか裁判の場になるまではっきりしない、権利行使にあたってのハードルが商標権より若干高めです。
識別マークとしてのロゴマークの第三者による模倣・使用を排除する権利としては、商標権ほどの使いやすさはありません。
ロゴマークをビジネスで活用するときはかならず商標登録をして使うようにしましょう。
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