商標登録の早期審査ってどのような制度なんだろう?
今日は、そんな貴方のために記事を作成しました。
商標登録までにどれくらいの期間がかかるのだろうと思って検索してみたところ、なんと1年以上もかかると知った。
「とてもじゃないけど長すぎる…」
そう感じている方も多いと思います。
- マーケティング活動やブランディング活動をすぐに開始したい
- 同じネーミングを使っている競合に使用をやめさせたい
- 早くAmazonブランド登録したい
- プレスリリースが近い
このようにビジネスを展開する上で、商標登録が重要になるシーンはたくさんありますもんね。
そんなとき早期審査制度を活用すると約2ヶ月という期間で商標登録を完了することができます。そして早期審査制度を活用して早期に商標登録することができれば、たくさんのメリットが受けることができます。
そこでこの記事では、早期審査とはなんなのかから始まって、商標を早期に登録する意味(早期審査のメリット)、そして早期審査の受け方(早期審査を受ける条件と手続きの方法)を説明します。
この記事を読んでいただくことで、早期審査を活用すべきかといった疑問や、どのように活用したらよいのかという疑問に答えをだしてもらえると思います。
ぜひ最後まで読んでみて下さい。
目次
1. 商標登録の早期審査制度とは
早期審査制度とは、商標登録出願をした者が申請をすると、通常に比べて早く審査を受けることができる制度です。
商標登録を受けるには、特許庁に商標登録出願をした後、審査官による審査を受ける必要がありますが、通常は審査を受けるまでに1年前後(9ヶ月~14ヶ月程度)の待ち期間が生じます。
このような審査待ちの期間の短縮を申請できる制度を早期審査制度と読んでいます。
1.1 早期審査制度を利用した場合の審査待ちの期間
早期審査を申請することにより、審査待ちの期間を約2ヶ月へと大幅短縮することができます。
1.2 早期審査制度を利用するのにかかる費用
しかもこの早期審査制度、申請するために特許庁に対して費用を支払う必要がありません(無料)。
申請書類の作成が少し複雑なので、作成を特許事務所などに依頼すると数万円程度の費用が必要になります(2~4万円と言われています)が、数ヶ月~1年近い期間短縮効果を考えると費用対効果は極めて高いと言えます。
2. 商標を早期に登録できることの意味(早期審査を受けるメリット)
そして早期審査を受けると商標登録を2ヶ月で受けられるという事は、ビジネス上の多くのメリットに繋がります。
- 似たネーミングを使っている他社に使用をやめさせられる
- 他社の登録商標との違いを確認できる
- 早くAmazonブランド登録を受けられる
- マーケティング・ブランディング活動を早期に開始できる
- フランチャイズ展開・事業提携などのタイミングで商標登録できる
- 海外展開に合わせて商標登録できる
- プレスリリースと商標登録のタイミングをあわせられる
順番に説明していきます。
2.1 似たネーミング等を使っている他社に使用をやめさせられる
近隣によくにた名前のショップを出店されて困っている、ウェブサイト上でよく似たサービス名を使われて困っている、なんて場合、早期に商標登録を受けることができれば、その使用をいち早く差し止める(やめさせる)ことができます。
商標権は、第三者に登録商標の使用をやめさせることができる強力な権利です。
早期に登録完了して商標権を発生させることができれば、早期に他人の使用をやめさせることができます。
2.2 他社の登録商標との違いを確認できる
自社の商標(ネーミング等)が他社の登録商標と類似しないことをはっきりさせたいという場合、早期審査制度を活用すれば結果を早期に知ることができます。
例えば、他社から商法権侵害の可能性を指摘された(警告を受けた)場合等に、自社の商標を商標登録出願・早期審査申請し、特許庁により商標登録を認められれば、自社の商標と他社の登録商標が類似しないことの一つの目安にすることができます。
2.3 早くAmazonブランド登録を受けられる
早期に商標登録できれば、Amazonブランド登録など、商標登録を前提とするサービスを早期に受けることができます。
早期にAmazonブランド登録をすることができれば、その分だけ相乗りによる売上減少を防止できますね。
2.4 マーケティング・ブランディング活動を早期に開始できる
早期に商標登録できれば、安心してマーケティング活動・ブランディング活動に資金を投入することができます。
商標登録が完了していない段階で、マーケティング活動・ブランディング活動を開始してしまうと、後からその商標が使えないものであることがわかった場合(他社によって商標登録されていることがわかった場合)、大ダメージを受けることとなってしまいます。
それまで投じたマーケティング費用・ブランディング費用を失うことに加え、商標権侵害による損害賠償請求等のリスクを負うことになりますよね。
2.5 フランチャイズ展開・事業提携などのタイミングで商標登録できる
フランチャイズ展開や事業提携の話が持ち上がった際に、社名・サービス名・商品名が商標登録されていないと提携パートナーとの間で知的財産権の取扱い上の問題となることがあります。
早期に商標登録できる早期審査制度を活用すれば2ヶ月という短期間で商標登録を受けることができます。
2.6 海外展開に合わせて商標登録できる
海外展開の予定など事業展開の予定は容易にずらすことができません。
他方で、海外展開をする上で商標登録が完了していることは自社ブランドを守る、模倣対策という意味で極めて重要です。
早期審査制度を活用する意味が大きいです。
2.7 プレスリリースと商標登録のタイミングをあわせられる
自社製品・サービスを紹介するプレスリリースは大きな注目を集める機会です。
それだけ多くの人の目に触れる製品名・サービス名・会社名等は商標登録を完了させ、他社の商標権を侵害する可能性をできるだけ排除し、安心して使える状態にしておきたいところです。
プレスリリースまでのタイミングが近いなんて場合は早期審査制度が活用できます。
3. 早期審査を申請する代償(早期審査のデメリット)
他方で早期審査を申請するにはいくつかの代償を払わなくてはならないことも事実です。
これら代償はいわば早期審査のデメリットです。
- 申請のための書類の作成がやや困難
- 斬新なサービス・商品は工夫が必要
順番に説明します。
3.1 申請のための書類の作成がやや困難
このあと5章でも説明しますが、早期審査申請のためには「早期審査に関する事情説明書」という書類を作成し特許庁に提出する必要があります。
その作成方法が少し困難である点、早期審査のデメリットと考えられます。
作成が困難なので、通常は特許事務所・弁理士等に作成・提出の代理を依頼することとなりますが、その分の費用が必要となります。
費用は通常2万円~4万円程度です。
3.2 斬新なサービス・商品は工夫が必要
早期審査を受けるための条件について、この後第4章で説明しますが、その条件を満たすために斬新な商品・サービスに対して商標登録を受けたいと考えている方は、少し工夫が必要となる場合があります。
どのような工夫が必要となるかは第5章に後述いたします。
早期審査のデメリットについて更に詳しく知りたい方のために、別記事を用意しました。興味ある方はこちらもご参照ください。
4. 早期審査を受けられる条件
引用元:「商標早期審査・早期審理ガイドライン」(特許庁)
早期審査を受けるためには、この図の対象1~3のいずれかに該当している必要があります。
4.1 商標の使用をしている + 商標登録に緊急性を要する(対象1)
上図の対象1に該当すれば早期審査を申請することができます。
対象1に該当するためには以下の2つの条件が両方とも満たされている必要があります。
- 1部の指定商品・指定役務について商標を使用している
- 商標登録に「緊急性を要する」事情がある
『一部の指定商品・指定役務について商標を使用』とは
商標登録出願の際、複数の指定商品・指定役務を指定するのが通常ですが、対象1に該当するためには、指定した指定商品・指定役務の一部について商標を使用していればOKです。
『緊急性を要するとは』
特許庁は、以下のいずれかに該当する場合を緊急性を要すると考えています。
- 第三者が出願商標を無断で使用(使用準備)している
- 出願商標の使用(使用準備)について第三者から警告を受けている
- 出願商標について第三者から使用許諾を求められている
- 出願商標について日本以外にも出願中である
- 早期審理の申出に係る出願をマドプロ出願の基礎出願とする予定がある
4.2 商標の使用をしている + 使用している商品・役務だけ商標登録出願(対象2)
上図の対象2に該当する場合も早期審査を申請することができます。
対象2に該当するためには以下の2つの条件が両方とも満たされている必要があります。
- 商標を使用している
- 商標を使用している商品・役務だけを指定商品・指定役務としている
言い換えると出願書類に記載した指定商品・指定役務のうち「全部の指定商品・指定役務で商標を使用している」ということです。
商標登録出願書類に記載した指定商品・指定役務に、実際に使用していない商品・役務が含まれると対象2に該当することになりません。
4.3 商標の使用をしている + 特許庁の規定する商品・役務のみを指定商品・指定役務に記載(対象3)
上図の対象3に該当する場合も早期審査を申請することができます。
対象3に該当するためには以下の2つの条件が両方とも満たされている必要があります。
- 1部の指定商品・指定役務について商標を使用している
- 特許庁の規定する商品・役務のみを指定商品・指定役務に記載
対象3は、比較的最近認められるようになった条件です。この条件が認められることになったので早期審査制度が非常に使いやすいものになりました。
『特許庁の指定する商品・役務のみを指定商品・指定役務に記載』とは
次のいずれかに記載されている商品・役務だけを、指定商品・指定役務にするという意味です。
- 商標法施行規則 別表(第6条関係)
- 類似商品・役務審査基準
- 商品・サービス国際分類表(ニース分類)
5. 早期審査の申請の手続き方法
商標登録出願と同時、または商標登録出願をした後に、特許庁に「早期審査に関する事情説明書」を提出します。
具体的な「早期審査に関する事情説明書」の作成方法は、特許庁が公表している「商標早期審査・早期審理ガイドライン」に詳細に説明されているので参考にしてください。
参考:「商標早期審査・早期審理ガイドライン」(特許庁)
斬新なサービス・商品について早期審査で商標登録を受けたい場合
斬新なサービス・商品は、先程対象3の説明(第4.2章)のところで説明した「特許庁の規定する商品・役務」に含まれていない可能性があります。
特許庁の規定する商品・役務
- 商標法施行規則 別表(第6条関係)
- 類似商品・役務審査基準
- 商品・サービス国際分類表(ニース分類)
この場合、さきほど説明した対象1か対象2に該当しないと、早期審査を利用することができません。
斬新なサービス・商品について早期審査制度を活用して商標登録を受けたい場合は、専門家(特許事務所・弁理士)に相談するようにして下さい。
6. 早期審査にまつわるよくある疑問(Q&A)
最後にこの章では早期審査にまつわるよくある疑問を解決していきます。
もしここに記載していない疑問・質問等あったら、遠慮なく問い合わせフォームで問い合わせて下さい。
商標を使用していない場合でも早期審査を受けることができますか?
商標を全く使用していない場合は、早期審査を利用することができません。
Webサイト等で商品・サービスの提供を開始してから早期審査を申請するか、「ファストトラック審査」の利用するなど代替案が考えられます。
「ファストトラック審査」であれば商標を使用していなくても利用することができ、審査期間も6ヶ月程度に短縮できます。
商標登録出願は済んでいるのですが、後から早期審査の申請をすることができますか?
はい。できます。
早期審査の申請は、商標登録出願と同時、または商標登録出願後にすることができます。
詳しくは、第5章「早期審査の申請の手続き方法」も参照してみて下さい。
もしわからないことがあったら、お問い合わせフォームよりお問い合わせ下さい。
早期審査を申請すると、商標登録が認められやすくなりますか?
商標登録が認められやすくなることはありません。逆に商標登録が認めにくくなることもありません。
早期審査制度はあくまで審査完了までの期間を早めるための制度です。
商標が登録されるかどうかの基準(商標審査基準)は変わりません。
早期審査制度は実際にどれくらい活用されているのですか?
早期審査制度の活用は年々進んでいます。以下のグラフは特許庁が公表している早期審査の利用実績のグラフです。2019年で年間8000件を越える申請があることがわかります。
引用元:商標早期審査・早期審理の概要(特許庁)
早期審査制度はどのような人・会社が活用しているのですか?
早期審査制度は幅広いジャンルの産業で活用されています。
特に、サービス業(下のグラフの「産業役務」、「一般役務」と記載されているもの)での活用が進んでいるようです。
近年のウェブサービス等、開発速度が早い分野で活用が進んでいるのではと予想しています。
引用元:商標早期審査・早期審理の概要(特許庁)
7. まとめ
今回は、商標の早期審査制度について説明しました。
全体的にみて早期審査制度は、非常に多くのメリットがある制度です。
- 似たネーミングを使っている他社に使用をやめさせられる
- 他社の登録商標との違いを確認できる
- 早くAmazonブランド登録を受けられる
- マーケティング・ブランディング活動を早期に開始できる
- フランチャイズ展開・事業提携などのタイミングで商標登録できる
- 海外展開に合わせて商標登録できる
- プレスリリースと商標登録のタイミングをあわせられる
第2章で説明したこれらメリットのどれか一つにでも魅力を感じたら絶対に利用すべき制度です。
第6章でも紹介した通り、実際、幅広い分野で活用が進んでいます。
ぜひ貴社でも活用を検討してみて下さい。
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